売買契約書に記載すべき事項について、ポイントを備忘録的に纏めてみました。売買契約書作成の時の一助となれば、と思っています。また、更に注意すべきポイントがありましたら、ご指摘頂けると幸いです。
1. 当事者の表示
どちらが売主でどちらが買主なのか、また、これが売買契約であることを明示する。
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売主 -----(以下「甲」という。)と買主 -----株式会社(以下「乙」という。)は、第1条に定める商品を売買することにつき、以下のとおり合意し、この契約(以下「本契約」という。)を締結する。
2. 売買の対象
目的物を明確にするため、売買の対象となる商品等々を記載。
3. 引き渡し
売主から買主に商品を引き渡す期日、引き渡し方法、引き渡し場所までの運送費用、引き渡し期日までの保管費用などをどちらが負担を定める。
また、イレギュラー時の免責事項、引渡しに要する費用が増加した場合の取り決めを記載する。
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[参考]
・甲は、戦争、内乱、大規模な自然災害、疫病その他の甲又は乙のいずれの責めにも帰することができない事由により、当該期日までに本商品を乙に引き渡すことができないときは、乙に対し、その理由を明示して相当と認められる期日の変更を請求することができる。
・引渡しに要する費用が増加した場合は、甲は、乙に対して、その増加分の費用の負担について協議を求めることができるものとする。
4. 売買の代金と支払方法
代金の支払時期、支払方法を具体的に定める。
5. 所有権移転時期
一般的には、以下の何れか
・売主から買主に目的物を引き渡したとき
・買主から売主に代金を支払ったとき
6. 危険負担
危険負担とは、債務者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、一方の債務が滅失毀損した場合(例えば、売主が倉庫で保管していた売買の目的物が、隣家からの失火により焼失してしまった場合など)、他方当事者が債務を負うのかどうかを定める規定。
【民法536条】民法上は、原則として、当事者双方の責めに帰すことができない事由によって、(売主的立場にある当事者が)契約上の義務を履行することができなくなった場合には、(買主的立場にある当事者は)代金の支払いを拒むことができる、とされている。
【民法567条】売買契約に関しては、買主が目的物の引き渡しを受けた後に、当該目的物が当事者双方の責めに帰すことができない事由によって滅失、損傷した場合には、買主は、代金支払義務を拒むことはできない。
7. 検査
買主が引き渡された商品を検査する方法や、検査期間などについて定めるが、検査期間は、商法第526条1項に買主は売買の目的物受領後、遅滞なくその検査をすることが義務付けられている。また、同条2項前段では、検査において目的物が種類、品質、数量に関して契約内容に適合しないことを発見したときは、「直ちに」売主に通知しなければ契約不適合責任を追及できない、となっている。
8. 遅延損害金
もし買主から代金が期日までに支払われなかった場合、売主が請求できる遅延損害金の利率を定めておく。
■14.6%の約定利息
民法404条2項により法定利率は、年3%となっており、当事者間で利率を決めていない場合は、遅延損害金の利率は法定利率の3%となる。但し、民法419条ただし書は、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率*によると規定しています。
尚、遅延損害金の利率に14.6%が用いられることが多いのは、国税通則法に定められた国税の延滞料率が年14.6%であること準じていると考えられる。
*当事者間で決めた遅延損害金利率
遅延損害金 = 元金残高 × 遅延損害金の利率(年利) ÷ 年間日数(閏年の場合は366)×遅延日数
9. 契約不適合責任
納品された商品の種類、品質、数量などに契約の内容と適合しないものがあった場合、売主が買主に対して負う責任について定める。
買主は、契約不適合責任の効果として、以下の法律を基に権利を行使することができる。
・追完請求権(民法第562条第1項)
・代金減額請求権(民法第563条)
・損害賠償請求権(民法第564条、民法第415条)
・解除権(民法第564条、民法第541条又は第542条)
また、目的物の「種類」又は「品質」の契約不適合があった場合、買主が権利を行使できる期間に制限(民法第566条)を設けており、
契約不適合が直ちに発見できないものであった場合でも、買主は6ヶ月以内に当該不適合を発見して、売主にその旨を通知しなければ契約不適合責任の追及はできない(同項後段)とされている。
なお、2020年4月の民法の一部の改正(債権法改正)により、それまでの「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」となっている。
10. 保証
商品が第三者の知的財産権を侵害していた場合の対処について規定する。
11. 契約の解除
売主と買主のいずれか一方が契約違反をしたり破産したりした場合は、契約が解除できる旨を記載。契約違反などによる契約解除に備え、双方の合意のうえ違約金を設定する場合もある。
11. 協議事項
契約書に記載されていない内容については、協議によって解決することを定める。
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甲及び乙は、本契約に定めのない事項及び本契約に関する解釈上の疑義については、誠実に協議の上、解決するものとする。
12. 合意管轄
紛争が生じた場合、どこの地域の裁判所で審理をするかを定めます。
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本契約に関する一切の紛争は、-----地方裁判所をもって第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
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